イマワノさん号製作記総集編
訃報を聞いて、すぐにそれまでホームページにアップしていたこのページを削除しました。
元気な姿をみるのがとてもつらくて。
しばらく時間をおいて、考えて、忌野清志郎さんの自転車好きの面を大勢のファンの方にみてもらうのがご本人もきっと臨む事だろうと思うのと、そのことを伝えていくのが自分ができるご供養と考え再掲載をさせて頂くことにしました。
改めて心よりご冥福をお祈り申し上げます、イマワノさん。
2009年12月8日 松永一治
今朝寝ぼけ眼でカレンダーを見て、
ハッ!
忌野さんのフレーム、夏休みにやればなんとかなると皮算用してしてましたが、夏休みにやったんじゃ、間に合わない。
(8月31日の鈴鹿でデビュー予定)
朝から、早くフレームシゴトに取りかかれるように、その他のシゴトをテキパキこなす。
今日は徹夜の覚悟。
しかし、終わってみると、通常のシゴトの終了が10時。
これから製作はじめるべきか、やめるべきか、悩みましたが。
ここは素直に、カラダのいうとおりに。明日は、絶対つくるぞ、と思いつつ、そそくさとシゴト場を後にしました。
明日はきっと、製作レポートかけるとおもいます。
ようやくそろった材料です。
このバラバラの状態では、なにが何だか割らないものが、フレームの形へ変わっていきます。
なんどつくっても、フシギだな~。
まずはラグになるチューブつくりから。
昨日の画像にあった、クロモリの長材を、必要寸法と必要肉厚に、旋盤という機械をつかってそいでいきます。
イマワノさんは、体重が56kgで、軽めのギャが好きなので、肉厚は、0.7mmに。
応力のかからないところは、さらに薄く0.6mmに削りだしました。
各パート用のチューブの削りだしができましたら、次は突き合わせの為のざぐりを、フライス盤とういう機械でおこないます。
これは、チューブの末端を、きれいにつなぎ合わせるために、アールどり(切り口が円筒状になるよう)します。
この作業は、設計図の寸法角度にあわせてざぐりますが、今回のイマワノさん号は、バックカーボンで可能な限りのスローピングというリクエストなので、トップチューブは現物あわせで寸法をとる方法をとったので、この段階で、トップチューブだけはざぐってありません。
まだ、まだ、下ごしらえの段階ですね。
ラグの下準備が出来たので、次はヘッドチューブとハンガーの準備。
ヘッドチューブはカーボンにしても、接着ラグの部分を考えると、ほとんどメリットのない長さなので、クロモリで製作。肉厚0.9mmハンガー(クランクのとりつく部分)も、軽量化のため、可能な限りの穴あけをする。
これで、ラグ用の小物類は完成。
チェーンステーとシートステーの接着ラグは、今回初めて作る形状なので、この段階では、まだ長さはカットしていません。
接着強度と寸法関係をみながら、治具上で現物あわせできめていきます。
ラグ用チューブが用意できたので、いよいよ、訳の分からなかったものがフレームの形に。
まずは、治具を設計図通りにセットします。
ここで、ヘッドアングル72度、シートアングル74度、BBダウン70mmなどと、図面と寸分違わず合わせていきます。
さて、治具をあわせたら、下ごしらえしたラグを治具にのせて、仮付けをしていきます。
ここからが、フレームをつくっているということが実感できる、醍醐味のあるパートでしょうか。
画像は、ヘッドチューブ側ダウンチューブラグと、BB側ダウンチューブラグを仮付けしているところ。
昨日の画像で、BBのシートチューブ側のラグが、仮付けできたので、チェーンステー用のラグの仮付けをします。
まず、今回のカーボンチェーンステーは初めてなので、接着面積やタイヤの入る幅をチェックしながら、長さをカット。
そうして、これまた、エンド幅などに気を使いながら、BBに仮付けをする。
接着の場合は、接着後のふれ取りができないので、最初の仮付けはかなり慎重にしなければ、できあがってみたら、エンド幅が140mmなんて、こともありえるのです。
前回では、チェーンステーのBB側付けののラグ部仮づけまでいきました。
次は、シートステーのラグ部の仮付けです。
今回は、リアカーボンバックでできるだけスローピングさせるということなので、設計図の段階では、まだ寸法がでていませんでした。
実際に材料を前にして、切っては削り、切っては削りを繰り返して寸法をだしていきます。
まずは、最小必要限の接着面積を計算してラグチューブをカットします。
次に実際にカーボンバックをあてながら、どれくらいまでスローピングでいきるかけずっていきます。
そうして寸法が決まったら、また、また、ラグのセンターを注意しながらシートチューブラグに仮づけをします。
これで、シートステーのシートチューブラグ側ラグの仮付けはおわりです。
シートステーのラグ位置が決まったので、トップチューブの位置がきめらるので、次はトップチューブの仮付けです。
結局、スローピングさいずでいうと、450mmのシートサイズまでスロープさせることができました。
バックカーボンでこんなに小さいサイズは、そうそう無いんでは無いでしょうか。
トップチューブのヘッド側ラグ、シートチューブ側ラグの、仮付けができたら、これですべてのラグの仮付け終了となります。
そして、仮付け部分を、本格的にロー付け(溶接)していきます。
前回はラグ部のローづけ(溶接)がほとんど終わったところですね。
ちょっと言い忘れたのですが、したブリッヂをつけるか、付けないかで、悩んだのですが、悩んだ末に付けることにしました。
以前に、このちっちゃなブリッヂを付けたときと、付けないときの、静荷重試験をしたとき、はっきとその違いがでたきおくがあるので、多少重くはなりますが、つけました。
次に、トップチューブにつけるブレーキワイヤーガイドを、下につけるか、上につけるか、を決めるために、実際にブレークをつけて、ワイヤーの取り回しをみました。
トップのシートチューブ位置が極端に低いため、上にしか点かないことがわかり、素直にトップチューブ斜め上に付けることにしました。
今風につけるのでしたら、トップチューブ下になるのでしょうか、物理的に無理なので仕方がないですね。
前回で小物と取り回しがきまり、仮づけできたラグを治具からはずし、全て本付けをして、ラグのできあがりです。
できあがったものを見ると、なんだこんなもんとお思いでしょうが、ここまでくるのが、クックック、語るもナミダ、効くもナミダものだったのです。
ラグができたので、次はチェーンステーの下につける、リアディレラー用のワイヤーストッパーをつくります。
世にある大半のフレームは、ネジやリベット止めでつけているのですが、いろいろ考えた末、絶対に取れない方法をとった方がいいと考え、バンド式接着でいくことに決定。
この小物も製作。
まずチューブにあうパイプを探して、必要な幅にカット。
そして、そのリングに鉄フレーム用ストッパー小物をロー付ける。
出来上がった小物を、チェーンステーに通して、接着支手出来上がり。
ラグが出来たので、次はカーボンチューブの用意です。
今回は、イマワノさんの体重、ペダリングをふまえた上で、 軽量化と剛性ということを考慮して、メインチューブは弾性率80tの炭素繊維を使った極薄チューブと、弾性率40tの炭素繊維をを使ったオーバーサイズチューブを使うことにしました。
カーボンチューブの先端に、角度の付いたガイドチューブを被せて、チューブの突き合わせがスムーズになるように削ります。
カーボンの粉が体中に刺さり、チクチク、かゆかゆになってしまう、やっかいな作業です。
真夏でもマスクに保護メガね、長袖、長パン、首にはタオルという、重装備で作業します。
こうして、角度、寸法を図面に合わせて削った後、実際に治具にのせて現物あわせで最終チェックします。
こうやって、メイン三角のカーボンチューブの寸法出がきまります。
前三角のチューブの用意ができたら次はバックです。
バックも同じように、ある程度寸法出しをしたら、あとは現物あわせで最終寸法を出していきます。
削ってはあわせて、合わせては削っての繰り返しですね。
カーボンチューブの寸法合わせがおわり、いよいよ、接着作業へ入ります。
下準備が全て終わった各部材です。
ラグ、チューブ両方に接着剤とぬって、治具にセットします。
このとき、どのチューブをどういう順番でさしていくか、というのが、結構重要です。
順番を間違えると、カタチにならなくなってしまいます。
治具にセットし終わったら、加熱器具をセットして、接着剤を硬化させます。
この作業でようやく、フレームらしいカタチが見えてきます。
治具に乗せてカタチになっったフレームの加熱硬化が終わると、
ジャ~ん、
ここまでここるとはっきりと自転車のフレームを作っていとわかります。
加熱硬化したフレームを治具からはずします。
次はボトル台座のめねじなる部分を、リベットと接着併用で取り付けします。
次は、硬化が終わったフレームの、ラグとチューブとの間に出来てしまった隙間を、さらに粘土型の接着剤でうめていきます。
これが、また、ちまちました作業で結構たいへんです。
接着の隙間うめの作業が終わると、次は仕上げ作業となります。
ヤスリ、ぺーサーサウンドを使って、はみ出た接着剤や溶接部をきれいにけずっていきます。
カーボンの粉まみれで、真っ黒になりながら、黙々とシコシコ、ヤスリがけをしていきます。
最後に全体を、目の細かいプラスチックスポンジで、みがいてさあできあがり。
ハンガーの裏に、
"KIYOSHIRO"
という刻印をいれる。
これで、完成。
あとは塗装工場へおくります。
できてきました、イマワノさん号。
カラー、マーキングは、直接やってもらったので、今回はどんな仕上がりでくるか、わかりませんでした。
とりあえず、すぐに組みつけ開始。
なんとか、無事に、いまやイマワノさんのバイクマネジャー化している、フジシタさんにお引き渡ししました。